斜め45度
2006-05-30T22:09:46+09:00
yabuking1
殺れるもんなら殺ってみないで・・・
Excite Blog
6話
http://yabuking.exblog.jp/3969866/
2006-05-30T22:08:00+09:00
2006-05-30T22:09:46+09:00
2006-05-30T22:08:04+09:00
yabuking1
無題
緑豊かな山を背景に浮かんでくる。
どこかの芸術家がデザインしたという校舎は
メタリックブルーの輝く壁で覆われ
研ぎ澄まされた凶器のように学生達を威圧する。
校内に学棟は全部で5棟あるのだが
全てそのメタリックブルーのギラギラした建物だ。
それは実のところ強化ガラスで作られており
中に入ってしまえばどこからでも外の景色が目に入る為
非常に開放感に溢れた建物になっている。
校内の至る所には幾何学的なモニュメントが鎮座しており
少し嫌味なぐらい芸術臭を感じさせる風景だった。
そんな朝日を受けてギラつく校舎を目指し
俺達は開放的な校門を通り抜ける。
周りには春特有のどこか浮ついた空気が漂い
まばらな学生の人影もどこかみんな楽しそうに見えたりする。
健斗「あれ?なんか今日は人少なくないか?」
いつもはこの時間に人で溢れ帰る校門が
周りを見れば4,5人しか人がいないことに気付いた。
弁慶「そういやそうだなぁ、今日朝から何かあったっけ?」
弁慶が俺との間を歩くノラへ問いかける。
ノラ「うーん・・・、わからないよ」
ノラは両手を掲げ大袈裟に「知らない」とジェスチャーする。
さすがアメリカ人、アクションがでかい。
弁慶「ひょっとしたら、どっかの部活がPR活動してるのかもな」
健斗「ロシア人だろ!」
ノラ「へ?」
とりあえず、自分でツッコんでおく。
健斗「そういや新入生の勧誘時期だもんな~」
ノラ「???????」
やはり大学生の春といえば新歓コンパ。
そのための新入生獲得に様々なクラブやサークルが力をいれる時期である。
勿論それはこの「高丸文芸大」でも同じこと。
毎朝校門付近では各部活・クラブ・サークルの連中が
「ねぇねぇ、君新入生?良かったらウチのサークルはいってみない?」
とか言いながら肩をガッチリホールドし
マルチ商法よろしく入部・入会届けにサインするまで
上級生に囲まれ軟禁されている新入生らしき姿をよくみる。
去年の今ごろは俺や弁慶が軟禁されていた時期だ。
俺は適当にあしらってその場を切り抜けていたが
弁慶のやつはいきなり暴れだしたり
弁慶「入ったらマネージャー全員と犯れるんだな?」
とか言って一瞬にして空気を凍結させたりしていた。
と、まぁいつもなら勧誘活動で賑やかな時間帯のこの場所なのだが・・・。
健斗「ん?」
キョロキョロと周りを見渡していると
一枚の落ちた紙切れに目が止まった。
いっぱい靴跡が付いて、ボロボロの紙切れ。
拾い上げて読んでみると、こう書いてあった。
「愛する葵タンへ」
・・・・・。
なんだこりゃ、ラブレター?
さらにその下を汚い字でつらつらと
いつも見てます、だとか
夜も眠れないです、だとか
ある意味ラブレターの教科書どうりの文章が並んでいる。
健斗「なぁ、こんなん落ちてたんだけど?」
俺の手元を覗き込んでこようとする弁慶へ
ボロボロの紙切れを見せる。
弁慶「げ・・・・、なんだこりゃ」
心底嫌そうにラブレターを読む弁慶。
弁慶「あなたは僕の天使です・・・・、んん?」
健斗「ん、どした?」
弁慶「昨日のCDTVのインタビュー・・・・」
弁慶「ああー!」
健斗「ど、どうした弁慶」
読み進むうちに驚きに表情を塗り替える弁慶
CDTVのインタビュー?なんだそれ?
深夜にやってる音楽番組のことか?
ノラ「あ、それあれだよ」
健斗「何々?それあれって代名詞ばっかだぞ」
ノラ「というかさっきのロシア人ってなんだったの?」
弁慶「例の新入生だよ!」
健斗「え?ロシア人の新入生?」
ノラ「え?そんなのいるの?」
弁慶「違う違う、俺の話だけを聞けよ」
健斗「え?ロシア人の話聞けばいいの?」
ノラ「え?私?」
弁慶「・・・・・・・・・・」
弁慶「いやだから・・・・、このラブレターの相手の話だよ」
健斗「それがロシア人?」
弁慶「違うわ!」
しばらくそんな話がエンドレスで続いた後
ようやく弁慶が本題の流れに戻すことに成功した。
その話によるとこうだ。]]>
5話
http://yabuking.exblog.jp/3907421/
2006-05-14T22:00:00+09:00
2006-05-30T21:19:52+09:00
2006-05-14T22:00:11+09:00
yabuking1
無題
ペシペシと叩いて意識をはっきりさせてやる。
しかし、弁慶はどこか夢うつつといった感じでニヘラニヘラ笑っている。
俺「ノラは今日も朝練だったんか?」
フラフラと起き上がる弁慶に肩を貸しながら
相変わらずニコニコと眩しい笑顔のノラへ問いかける。
ノラ「練習というか打ち合わせだよー今日は」
俺「打ち合わせ?なんの?」
ノラと俺達は同じ文化学部に在籍するクラスメートだ。
芸術学部に比べて圧倒的に不人気な文化学部は
2つのクラスにそれぞれ50名ほどに分かれている。
特に部活やサークルに興味の無い俺や弁慶と違い
ノラは積極的にサークル活動に参加している。
芸術大学としては珍しく、高丸文化芸術大学には
ちゃんとした体育系の部活やサークルが揃っている。
そんな中でも特にノラの所属するサークルは全国的に見ても
かなり有名な総合格闘技サークルだったりする。
「チーム ドラゴン」
TVで格闘技のイベントが組まれれば
必ずこの名前が出てくるほど、日本の雄でもある。
現役ファイターも所属しているようなチームが
何故こんな片田舎の大学に存在しているのかというと、
高丸文化芸術大学の学長に理由がある。
高丸文化芸術大学 学長「三島 龍」
高丸のドラゴンとして恐れられる学長は
知る人ぞ知る空手界の現人神なのだ。
体ひとつで米軍の戦車20台破壊したとか
酔った勢いで暴力団ひとつ壊滅させたとか
数々の信じがたい伝説を持っている。
そんなドラゴンに憧れて入学したやつもかなり多いはず。
すでに格闘技の世界から身を引いて
教えるものとしての道を進んでいた学長が
己が教えることのできる全てを伝える為に、
有志とともに設立したのが「チーム ドラゴン」なのだ。
そして去年そのチーム ドラゴンに一人の少女が加わった。
それが俺のボロアパートの隣人ノーラ セルゲイノフだったりする。
ノラ「ほら、去年新入生向けのサークル紹介あったじゃん」
俺「あぁ・・・・、なるほど。その打ち合わせだったのか」
ノラ「そうそう、それが今日の13:00からあるのよー」
去年のサークル紹介を思い出してみる。
すぐに浮かんできたのは血、赤、悲鳴。
そして、ノラの笑顔。
弁慶「あの惨劇が再び起こるのか・・・・・・」
俺と同じように去年の事を思い出したのか
肩にもたれたままフラフラ歩いていた弁慶がガクガクと震え始める。
ノラ「ん?何が起こるって?」
ノラがニコニコ笑いながら弁慶に問いかける。
弁慶「ななななんでもないでふ!」
他意の無いその笑顔を不気味に感じたのか
弁慶は俺の背中へ隠れてしまった。
俺「まぁ、怪我しないようにほどほどにな」
ノラ「任せてよー、エキシビジョンマッチやるから見ててねー」
どうやら今年も怪我人が出るようだ。
そんな春の日。]]>
4話
http://yabuking.exblog.jp/3896072/
2006-05-11T22:05:07+09:00
2006-05-11T22:05:09+09:00
2006-05-11T22:05:09+09:00
yabuking1
無題
ひっそりとした住宅街を西へ進むと
高丸町を分断する桜川へ突き当たる。
水深は深いところで1Mほどの流れの緩やかなこの川は
両岸を延々と続く桜の木々で囲まれ
散っていく花びらを流れに乗せる。
水面の波頭は朝日でキラキラと輝き
その上を桜吹雪が飛んでいく。
その光景はとても幻想的で美しく
見る者の心を深く捕らえて離さない。
町で唯一の川を渡る橋
通称「桜橋」へ着く頃には
俺達は走り続けた疲労も忘れ
この光景に目を細めていた。
俺「いつ見てもスゲーよなー」
弁慶「川の流れまでピンク色だもんな」
そう言いながら橋の上から水面を見つめる。
高さ僅か2Mほどの橋は水面に近く
ひんやりと水の冷たさが空気を包み、
火照った体を気持ちよく通り抜けていく。
弁慶「健斗の脳ミソみたいにピンクまみれだな」
俺「若いからね!デヘヘ」
橋の中間あたりまで来た時、
前方のほうから二人を呼ぶ声が聞こえた。
「ケントー!ベンケー!」
その声に絶景から目を離し
川の向こう岸へと顔を向ける。
弁慶「ノラァァァァ!」
弁慶がその声の主へ絶叫を上げる。
そしてそのまま走り出す。
ここまでほぼ全速力で走ってきたのに
まだ体力が余っているとは。
橋の先には白い肌に輝く銀髪の女性が一人。
高丸文芸大生であり、我がボロアパートの隣人でもある「ノーラ・セルゲイノフ」だ。
その姿は見る者の心を奪う、絶世の美女。
ロシアの血が流れるその目は大海のようなマリンブルー。
雪を思わせる白い肌に細く長い手足。
風になびく銀髪は朝日を浴びて眩しく輝く。
モデルのようなその容姿はまさに女神。
その女神へ弁慶が肉薄する
弁慶「ノラァァァァ!」
飢えた野犬のように華奢い弁慶の体がノラへと襲い掛かる。
どう見ても、変態に襲われる女の子の光景だが
ノラの真の姿を知る者から見れば
弁慶こそノラの獲物、哀れむべきは弁慶のほうだ。
ノラ「おっはよー!」
満面の笑みでノラはそう叫びながら
飛びついてくる弁慶へ格闘家真っ青の
電光石火の左ハイキックを繰り出す。
弁慶「へぎゃっ!」
弁慶の首元へ最高の角度で突き刺さるハイキック。
なんだがとても危険な骨っぽい破壊音を響かせながら
弁慶はそのままゴミのように横へ吹っ飛んだ。
その間0,1秒
俺「おはよう、ノラ」
笑顔のまま弁慶を瞬殺した女神は
俺へもその最高の笑顔で挨拶をした。
ノラ「おっはー!」
ノーラ・セルゲイノフ
高丸文化芸術大学に通う、俺の隣人。
男を虜にするその美貌と
世界のあらゆる格闘技に精通した戦闘力で
色んな意味でKOしてしまう底抜けに明るいロシア美人である。
弁慶「さ、触りたかった・・・・・」
俺「お前のほうが脳ミソピンクだよな」
]]>
3話
http://yabuking.exblog.jp/3888703/
2006-05-09T23:31:01+09:00
2006-05-09T23:31:01+09:00
2006-05-09T23:31:01+09:00
yabuking1
無題
そろそろ家を出発しないと一限目が厳しい時間になっていた。
とりあえず悪戯の過ぎる弁慶は
俺の豪快なミドルキックでドアごと吹き飛ばして
制裁を加えてやったが、もう既にケロっとしている。
弁慶「ほらほら!早く鞄持てよ!」
俺「あーあー、今日の3限目ってなんだっけか」
俺と弁慶はこの町にある唯一の大学
「高丸文化芸術大学」の2回生だ。
文化学部と芸術学部しかない小さな大学なのだが
その個性的な講義内容と個性的な教授がいるということで
この方面を志す人間にとっては人気の高い大学だったりする。
学生数、1000人に満たない程度の規模ではあったが
それはもう活気に満ち溢れた学校だったりするのだ。
「高丸町」はそれほど都会でもなく
かといって田舎でもない。
良く言えば、自然と人が調和した町だと言えるのだが
悪く言えば、さしたる取り柄の無い町だとも言えるだろう。
夏は避暑地というほど大自然に囲まれているわけでもない。
冬は白銀の世界というほど雪が積もるわけでもない。
そういったこともあって数年前まではパっとしない静かな町だったらしい。
それではイカンと町のオエライ方々が計画したのが
「教育施設の誘致」だったらしい。
それまで高丸町には小中学校が1つづつしか存在しておらず
若者が土地を離れていくという過疎化が進み始めていた。
そんな町に活気を与えるべくお役所は一大決心をしたというわけだ。
そんなわけで「高丸文化芸術大学」がこの町に現れたのが6年前だそうだ。
北・西・東と3方をなだらかな山で囲まれたこの高丸町。
北の「高丸山」から流れる川によって東西に分断されており
小さな車が2台通れるほどの橋が一つかかっているだけ。
その橋をまっすぐ西へ行くと俺の通う高丸文芸大が所在している。
なので町の西地区は比較的若者の多い活気あふれる地域なのだが
東地区は比較的閑散した住宅街だったりする。
都会へ出て行った人が残した廃屋や開くことの無い商店や。
そんな中にあるのが俺の住むボロアパートだったりする。
俺のミドルキックですっかりグラグラになってしまった
部屋のドアを開けると東の山からすっかり上りきった朝日が
アパートの廊下を優しく照らし出していた。
俺「ひゃー、今日もいい天気だな」
弁慶「桜川まで早くいこうぜ」
俺につづいて部屋を出てきた弁慶も
同じように天気の良さに目を細めた。
桜川というのはこの町を東西に分断する川の名前だ。
川沿いを延々と北から南まで桜の木が立ち並んでいることから
そう呼ばれているらしい。
1年前もその桜がずらっと並んでいる光景に感動したものだ。
俺「おう、どっちが速いか勝負な!」
弁慶「はいはい、んじゃ俺負けー」
俺「ノリ悪いな、冷めたヤツめ」
弁慶は俺を冷めた目で見つめながら
鼻でフフンと笑うと、さっさとタバコに火をつけ始めた。
俺「きー!生意気な子だこと!」
とりあえずさっさと学校へ向かわないと
本当に間に合わない時間になってきた。
競争はしないまでも、少し走らないと遅刻確定だったりもする。
廊下を少し小走りで急ぎながら
ちらりと隣室のドアを見た。
「ノーラ・セルゲイノフ」
こう書かれた表札がかかったドアは固く閉ざされ
中に人がいる気配は全くない。
(もう出てるのかな)
弁慶「おいおい、まじで走るのかよ・・・」
俺「うるせぇ!お前が俺を部屋から締め出したりするからもう時間無いんだよ!」
弁慶「えーえー、めんどくせー、遅刻でイイヨー」
渋る弁慶のケツを蹴り上げながら
今日も走るいつもの通学路だった。]]>
2話
http://yabuking.exblog.jp/3880870/
2006-05-08T01:36:00+09:00
2006-05-08T22:18:21+09:00
2006-05-08T01:36:29+09:00
yabuking1
無題
6畳の狭い部屋に一つだけ付いている
小さな小窓のカーテンから漏れる光が
漂う埃に反射して、一筋の光の道を浮かび上がらせている。
俺「うるせ・・・」
枕元から鳴り響く電子音を止めるべく
両手で枕付近をごそごそとまさぐる。
右手に冷たいプラスチックの感触を確かめると
握り締めて顔の前まで持ってくる。
二つ折りの携帯電話がカラフルに液晶を点滅させながら
飽きもせず雑音を垂れ流している。
朝8時に設定されたアラームを止めるべく
薄目で携帯のボタンを操作しながら
今日の予定をゆっくり思い出してみる。
俺「あれ?」
アラームを止めると1通のメールが届いているのに気付いた。
ボタンをポチポチと押しながらメールを開封してみる。
受信時間は深夜3時、ぐっすりと眠っていて気がつかなかったみたいだ。
件名は「Re:Re:Re:のおじさん」
こんなふざけた件名で送ってくるヤツは一人。
送信者「遠藤 弁慶」、この男だけだ。
「健斗!聞いてくれ!いや読んでくれ!
実はこの間言ってたギターのことなんだけどさ。
うーん、やっぱ明日学校で言う。
気になるなら今教えてあげないでもないが
どうしようかなぁ~★★★★★★★★ミミミミミ」
と、内容はこんな感じ。
リアルタイムで読んでいても多分スルーしているようなメールだった。
最後の星辺りにかわいさを感じる人もいるだろうが
星の数の多さに痛々しさを感じずにはいられない。
一言「死ね」と書いて返信ボタンを押すと
布団からもぞもぞと抜け出した。
俺、桧山健斗がこのボロアパートに住みだして約1年。
今じゃすっかり一人暮らしも慣れてしまった。
毎朝響く無機質な電子音に、
小窓からこぼれる光のベール。
いつもの道を進めばいつもの大学へ到着し、
いつもの階段を気だるそうに登り、
いつもの顔ぶれに巡り会う。
そんないつもの大学生活。
湯船にお湯を貯めながらそんな事を思う。
俺は朝から湯に浸からないと一日が始まらないタイプなのだ。
鼻までお湯に沈み、今日という一日の事を夢想して幻想して
期待と不安に胸膨らませて一日を始めるのだ。
さっき「いつもの生活」なんて言ったけど
あれは真っ赤な嘘だ。
毎日が新しい刺激で溢れている。
それはきっとイイ事なんだろうけど、
とても幸せな事なんだろうけど、
繰り返し繰り返し訪れるアクシデントを毎日違った形で続けられれば
多少嫌気も差してくるものだろう。
熱々のお湯に浸かりながらそんな事を思っていると
今日もアクシデントの根源が朝1番から我が家へ訪れる。
ピンポーン
インターホンの鳴る音。
その電子音は木造アパートにはひどく不釣合いだよな、とか
常々思う事はあったが今はまた別のお話。
ピンポーン
再び電子音。
俺は勿論入浴中なので出れない。
いちいちバスタオル巻いて出るのもめんどうだし
鳴らしているヤツが大体予想つくから出ない。
ピピピピ・・・・
ンポーンピンピンピンピピピ
ンポーンピンポーン
とうとう連射しだした。
ドアの前で真面目な顔して
人差し指を痙攣させながら連射している姿が目に浮かぶ。
そろそろ近所迷惑になるから止めなければ・・・
俺「うっせぇ弁慶!今風呂じゃ!」
空気とか雰囲気とかそういうものが全く読めない
俺の友人へ怒鳴り声を上げる。
ピンポーン
俺「・・・・・・・・」
あの野郎、しつこいな。
風呂上がったら色々拭いたタオルで
顔面グルグル巻きにしてやる。
ピンポーン
俺「だーかーらー!風呂はいってるから!」
ピンポーン
俺「うるせぇ!」
ピンポーン
俺「・・・・・・・・」
さすがに度が過ぎる
だがしかし、我が友人遠藤 弁慶には
そんな概念などこれっぽっちも存在していない。
鳴り続けるインターホンにイラ立ちながらも
湯船から上がり、風呂場のドアを開ける。
俺「うおぉぉぉぉっ!?」
途端、いきなり目の前に人がいた。
弁慶「おはよう、相変わらず長風呂だなぁ」
俺「お前なんで入ってきてんだよ!」
弁慶「いや、鍵あいてたけど?」
それでも鳴り続けるインターホン。
俺「・・・・・・・・・・」
弁慶「・・・・・・・・・・」
ピンポーン
俺「え?」
じゃあ鳴らしてるの誰?とか言おうとしたけど
その前に自分が素っ裸な事を思い出した。
俺「うぁ、お前応対しといてくれよ!」
バスタオルで勢いよく体を拭きながら
弁慶へ怒鳴りつける。
まぁ弁慶は男同士なんで、裸見られようが照れはしないけど
さすがに来客をオールヌードで出迎えるわけにはいかない。
あせる俺とは別に弁慶はそ知らぬ顔で
さっさと部屋の奥でTVを見ながら朝の1服などかましている。
なんて横柄なヤツだ。
この性格に大抵の人間は離れていくが
俺は弁慶のこういう所が好きだったりする。
俺「はいはい、お待たせしました」
ようやく体を拭き終わり、
パンツとTシャツを装着した俺は玄関のドアを開ける。
俺「・・・・・あれ?」
だが、誰もいなかった。
そんな馬鹿な!
だって今もほらピンポーンて・・・
30センチほどしか開かなかったドアを
勢いよく全開にしてアパートの廊下へ体を乗り出す。
いない!誰もいない!
俺「えぇ・・・・、ちょっと何だよこれ・・・・・」
ピンポーン
一瞬、ポルターガイストやお化けとか考えたけど、
体をドアの方へ向け、インターホンのボタンを見て気付いた。
プラスチックの鳥のオモチャがケツから糸をぶらさげて
コツンコツンとクチバシでボタンを押していた。
クチバシで突く度に糸が体内で巻き取られていく。
ピンポーン
俺「・・・・・・・・・・」
その時ガチャリと音がして
部屋の鍵がかけられる音がした。
そして廊下に一人取り残される俺。
遠藤 弁慶
それは俺の大学の友人であり、
いつか殺すリスト第1位の酷いヤツだった。]]>
1話
http://yabuking.exblog.jp/3880665/
2006-05-08T00:51:06+09:00
2006-05-08T00:51:06+09:00
2006-05-08T00:51:06+09:00
yabuking1
無題
せせらぐ川の囁きは美しく。
心地よい空間は全身を包み込み
日常から切り離されたこの時間が
永遠に続けばいいのに、そう思わせた。
そっと目を開ければそこは一面の青い空。
視界を青に埋め尽くされ、張り返ればそこも青に違いない。
空に放り出されたような無力感が身を包む。
もう一度目を閉じ、背中の感触を意識する。
確かにそこに大地はあり、微動だにせず俺の背中に張り付いている。
すぅ、と空気を鼻から吸えば緑の匂いが心地良い。
首元を雑草が優しく撫でる感触も心地良い。
もう一度目を開ければ青い空は少しも変わらず
視界を当たり前のように埋め尽くした。
ただ、俺は大地を背中に強く感じ、
高い空とは違う場所にいるのだと。
重力という鎖に縫い付けられ
この大地にだらしなく寝転がっているのだった。
風が頬を撫で前髪を揺らした。
それと同時に遠くから運ばれて来た音が
俺の意識をここへ戻した。
硬そうな革靴の音がゆっくりと近づいてくる
一定のリズムでゆっくりとはっきりとした音で。
その音がはっきりと傍に聞きとれる位置に来るまで
俺はこの優しい空間に全身を浸し続けていた。
足音は俺のすぐ傍まで来ると止まった。
俺はゆっくりと体に力を込めると
上半身だけを大地から引き剥がした。
俺「もう時間かな?」
足音の方へ顔を向けずに
空を見つめ続けながら問いかけた。
「時間はとっくに過ぎている」
俺「あぁ、そうだったかな。じゃあタイムリミットってとこか」
「そう、最終期限だな」
俺「じゃあ仕方ないね」
変わらない空を見つめ続ける。
返ってくる声は確かな意思を持ちながら
どこか悲しく、切ない思いを匂いを響かせていた。
「ごめんな健斗」
突然の謝罪の言葉に俺は驚いた。
俺「はは、今さらそれは無いよ」
「すまん」
それからしばらく小さな謝罪の声が止まることは無かった。
「すまん・・・・」
その声は許しを請うものではなく
これから起こる事への覚悟のように
繰り返し繰り返し俺の耳へ届けられ続けた。]]>
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